Date: 2011年03月23日

茨城ホウレン草問題のどこが問題か その1

茨城ホウレン草問題のどこが問題か その1

 福島第1原発事故で放出された放射性物資は隣県の茨城にまで拡散し、茨城県北部の高萩市、日立市、常陸太田市、大子町、東海村、ひたちなか市の農家のホウレン草から、最大で規制値の7.5の放射性ヨウ素が検出された。これを受けて茨城当局は全県でホウレン草の出荷自粛を求めた(3月20日付 読売新聞)。21日には政府が福島、茨城、栃木、群馬の各県知事に政府が「出荷制限」を求めた(3月21日付 読売新聞)。
 東京圏では茨城産のホウレン草が小売店から続々と返品され、品不足は東京はおろか大阪にまで及んでいる。農家の受けた損失は東京電力からの補償で埋め合わせが行われるという。

 事態の推移は1999年に東海村で起きた、JCO臨界事故の時と同じだ。ただし今回は、あの時の事故と比べたらはるかに事態は深刻だ。
 第一に核汚染の範囲が広範囲であること。汚染の範囲は最大の原子炉事故被災地である福島県はもとより、その隣県にまで及んでいる。
 第二に核汚染が長期化するであろうこと。福島第1原発事故は最大の難局を乗り切ったとはいえ、現地では予断の許されない状況が続き、核汚染の中での復旧作業は困難を極めている。原子炉の状態が安定するまでは今後1年はかかろうという見通しも報道されている。
 第三に原発事故による経済的打撃があまりにも深刻で、その補償額はこれまでにない巨額のものとなることだ。
 JCOの事故でJCOが支払った補償金は約150億円。これには出荷できなくなった農産物の補償の他にも、住民の健康被害や検査・避難の費用が含まれる。しかしJCOの事故では避難の対象が半径350圏内に過ぎず、期間も3日間と短期間だった(3月23日付 読売新聞)。今回の事故はそれとは比べ物にならない。補償の大幅な遅滞や、補償そのものが不可能となる可能性も大いにあり得ると私は考える。

 茨城県の出荷自粛要請、そして政府の出荷停止について私が感じた疑問は、これが県単位で行われていることだ。地図で見ると茨城県の北の端から南の端までは100km以上の距離がある。西の端である古河市は埼玉県に、南の端である利根町は千葉県と隣り合っている。この埼玉県と千葉県では両県とも出荷停止が行われていない。私が古河市か利根町の農家の人間だとしたら、県境の茨城側に住んでいるというだけで農産物の出荷が出来なくなることに、たいへん理不尽な思いを抱くことだろう。
 放射性ヨウ素の検出された6つの自治体は皆、茨城県の北部に集中している。しかし私の住む茨城県南も出荷停止の悪影響をこうむることとなった。
 私の住むアパートはつくば市の中でも牛久市に近い場所にある。昨日、牛久の八百屋へ買物に行くと、まだホウレン草が売り場に並んでいた。そのホウレン草を手に取ってレジへ持っていくと、「出荷停止の影響でホウレン草の入荷がストップします」と張り紙がしてある。
「ホウレン草、大変なことになったね」
 と、私がレジのおばさんに話しかけると、
「このホウレン草は検査の前に入ったものだから、大丈夫だよ」
 と、笑って答えてくれた。
 茨城県のほぼ中央にある県庁所在地で、県北部にも近い水戸市では現在、高い放射線量が観測されている。読売新聞の社会面にその図が載っているが、これを見た茨城県外の人々は、茨城県の全域で放射能汚染の危険が高まっているような印象を受けるだろう。
 しかし私の住むつくば市や牛久市は、水戸市から約60kmも離れており、むしろ東京寄りの場所に位置している。放射線量も水戸市よりも千葉県や埼玉県の値に近いのではないかと推測されるし、農産物について言えばより安全性が高いと思われる。
 その茨城県南の農産物さえもが、出荷停止により消費者に届かなくなり、県南の農家に経済的な打撃を与えるのだ。
 このように、全県一律の出荷自粛や出荷停止は、現状に即した対応とはいえない。むしろ東西南北で区分けされた茨城県の行政区分に従い、最低でも県央地区・県南地区・県西地区・鹿行地区の4つの区域ごとに出荷自粛・出荷停止の判断を行うほうが理にかなっていると、私は考える。

 この問題については茨城県知事、そして政府の担当者にも訴えたい。いや、訴えなければならない。
 この件についても、私は近日中に行動を起こす。

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Posted by 岩崎綾之 at 20:54│Comments(0)茨城ホウレン草問題

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